ごあいさつ
日本ミュージアム・マネージメント学会へようこそ
日本ミュージアム・マネージメント学会(以下、JMMA)は1995年3月18日に創設され、2025年に30周年を迎えました。その間、博物館を取り巻く環境は大きく変わりました。1951年の博物館法公布以来、博物館の法制上の確立が進み、博物館は社会教育機関として運営されてきました。その後、国及び自治体の財政状況が悪化する中で、説明責任、透明性の確保、政府による個人や市場への介入を最低限とすべき政策が実行され、独立行政法人、指定管理者制度など、博物館の経営形態が多様化しました。これはミュージアムの経営に民間的手法などを取り入れて、効率化を目指すものであります。
さらに近年はUNESCO(国際連合教育科学文化機関)のミュージアムに関する勧告、2022年の博物館法改正やICOM(国際博物館会議)の博物館定義の改定もあり、気候変動、紛争、貧困、ジェンダー、社会包摂、観光、地域振興などの社会的課題に対するミュージアムの役割が期待されつつあります。ミュージアムには、これまでの効率化を目指した経営手法をアップデートし、社会的課題の解決と創造的なコミュニティを構築するための経営理念が求められています。現代はミュージアムを固定的な施設ではなく、社会の中の機能として捉えて、そのマネージメントを考究していく時代です。
このような社会状況にあって、ミュージアムの在り方についてマネージメントの観点から考究するJMMAの存在意義がますます重要になってきています。JMMA会員は「ミュージアムマネージメント学は何のために、何を目指しているのか」という問いに応えていかなければなりません。JMMAの会則第3条には「本会は、ミュージアムマネージメントに関する研究及び情報交流等を通じて、国内外のミュージアムの発展を図り、もって学術を振興し、国民生活の向上に寄与することを目的とする」とあります。ミュージアムが人々の日々の生活の中で話題になり、利用され、なくてはならないものとして認識されること、これこそが人々の文化を支え、育てるミュージアムと考えます。学会員のみならず、ミュージアム関係者、大学教員、科学者、自治体関係者、そして市民も巻き込んでミュージアムを育てていく気運を醸成しなければならないと心新たにする次第です。その基盤として学会員による研究が活性化し、優れた成果が次々と生まれるように、これまで以上に学会運営を機動的にしていきたいと考えています。
多様な会員が集い、議論し、学びあい、競い合い、高めあう学会を目指していきます。皆さんのご参加をお待ちしております。
2025年3月
日本ミュージアム・マネージメント学会
会長 小川 義和