私が館長をしている日本玩具博物館所蔵資料による『日本と世界 おもしろ玩具図鑑』が、神戸新聞総合出版センターから出版されました。A5判191ページのオールカラー、定価は1800円です。この本は平成27年の1年間、神戸新聞のコラム欄に『おもちゃの四季』と題して季節を切り口に、私と学芸員尾崎織女が所蔵の玩具や人形を交互に紹介してきた原稿を加筆修正し、「日本の草花で作る玩具」「今に伝わる江戸時代の玩具」「各地の郷土玩具」「近代玩具」、さらに「世界の玩具いろいろ」と項目毎にまとめ、解説を付け加えました。
掲載当時は画像が3㎝角ほどと小さかったのですが、それが数倍もの大きさになり、見て楽しい迫力満点の本になりました。日本の玩具や世界の玩具をこのようにまとめた本は前例がないのではと思います。
玩具は人間と共に歩んできた古い歴史を持つ文化遺産といえるものですが文化財として認知されることはなく、その多くが失われる運命にありました。私は53年前に玩具研究家の斉藤良輔氏の『日本の郷土玩具』と出合って以来、玩具も大切な文化遺産だと考えるようになり、郷土玩具だけでなく、手作りの玩具や駄菓子屋の玩具、世界の玩具などと収集の対象を広げ、継続してきました。
当館は私個人が設立し運営してきた館ですが、ぶれることなく使命を追い求めてきた結果、大きな成果をあげることができました。収集にはタイミングが大切で収集不可能なものを多数所蔵しています。この本には過去のものになった玩具や人形が多数収録されており、その価値に気付いていただくよすがになれば幸いです。
同書のまえがきでも触れていますが当館に昨年夏、フランスからミシュラン・グリーンガイドの担当者が来館され、昨年暮に二つ星と評価されました。同ガイドは日本を訪れる外国人観光客のために、観光地や観光施設を独自の方法で調査し、充実した旅を楽しむための情報を提供しており、旅行者にお勧めの場所を三つ星・二つ星・一つ星と星の数で評価しています。★★★三つ星は「わざわざ旅行する価値がある」、★★二つ星は「寄り道する価値がある」、★一つ星は「興味深い」です。博物館は文化財の豊かさや美術的価値、本物としての魅力や調和などから評価されているのですが、★★★三つ星は全国で6館、★★二つ星は全国で32館、★一つ星が54館です。詳細がわかるにつれ、当館が二つ星に認定されたことに驚いています。
二つ星に評価された主な館は仙台市立博物館、土門拳記念館、江戸東京博物館、国立近代美術館、出光美術館、サントリー美術館、森アートミュージアム、彫刻の森美術館、三島由紀夫文学館、徳川美術館、北斎館、金沢21世紀美術館、楽美術館、竹中大工道具館、大原美術館、足立美術館、豊島美術館、福岡アジア美術館などで、知名度の高いそうそうたる博物館と並んで一個人が設立した当館が評価されたことに驚くと共に、当館が所蔵する膨大な資料を散逸させずに後世に遺すにはどうすればよいか、考え悩む日々が続きます。
井上重義(日本玩具博物館館長・JMMA理事)
http://www.japan-toy-museum.org/new_director.htm
==================================================================
書名:『日本と世界 おもしろ玩具図鑑』
著者:日本玩具博物館著
発行:神戸新聞総合出版センター
判型:A5判191ページ/オールカラー
定価:1800円
神戸新聞総合出版センター
〒650-0044 神戸市中央区東川崎町1-5-7 神戸情報文化ビル9階
TEL.078-362-7140 FAX.078-361-7552
http://ec.kobe-np.co.jp/syuppan/html/