リレーコラム

リレーコラム2「吹かせよう,新しい風!ミュージアムはどこへ向かう?」

2016年1月8日 13時29分 [事務局]

 新年明けましておめでとうございます。本年もミュージアムマネージメント学会をよろしくお願いいたします。

 

 昨年末から続いた,パリでのテロ事件,ヨーロッパを始めとする各国への多数の難民,北朝鮮の核実験など,日本を取り巻く激変する社会的環境の中で,ミュージアムはどのように経営・運営されていくべきなのでしょうか。1920世紀を通じて確立されてきた「ミュージアム理論」は,時代の変化の中でもその有用性を示してきました。特に日本では,貴重な文化資源の保存と活用を旨とする博物館法が有効な手立てとして機能して各地に有用なミュージアムを誕生させてきましたが,調査研究と実物資料の保存と資料を活用した教育普及活動がその中心でした。その後,日本経済の長い低迷期を迎えて,ミュージアムの設置・運営にも工夫が求められる時代となり,「ミュージアム・マネージメント」が求められることとなりましたが,指定管理者制度による運営が拡がり,人材育成などにも新しい課題が生じています。

 ミュージアム・マネージメントの実践場面や研究などにおいても,過去の手法から脱出できず,仕組みを変えることにいささか抵抗感があるのも事実でしょう。ミュージアムにとっては,過去を温存し,歴史を護ることは極めて重要な機能ですが,少なくとも,私たちJMMA会員は新しい考え方を取り入れ,ミュージアム・マネージメントの研究と実践の観点から新しい動きを創造していくことが期待されています。もちろん,これまでの学問分野の蓄積にそってルールを踏襲していくことは必要ですし,大いなる実験を博物館の現場で果敢に挑戦し,常に「風はどこに向かっているか」という問いを発しながら,そのミュージアム実践・実験を普遍的な理論へと昇華させる努力をしていくことが今求められています。

 

JMMAは創立以来20年を経験し,これから自立した学会運営を更に発展させていく新しい体制を整えました。このような時代に「新しい風」を吹き込もうとするわけです。このような新しい風にのって,私たちは果たしてどのような方向に動いていくべきでしょうか。

 

当学会の運営も,この時代の流れに対応すべく,学会のウェブサイトも刷新し,アーカイブ機能や会員同士の交流機能を整備いたしました。また,会員の研究発表を容易にするための投稿方法もこれまでの手作業からウェブ対応へと進化させました。これらによって,JMMAの過去の活動を参照し様々な議論を通して新しいビジョンを創造することが可能となるでしょう。

 学会は楽しみながらも真摯に学術振興に寄与するためのものです。どうぞ新しい提案・提言・実験・実践・研究発表でミュージアム界に新しい風を起こしていきましょう。

 

JMMA副会長 高安礼士

(201611)